
高知県産のブドウを使用した「TOSAワイン」を中心に、自社醸造所で果実酒づくりを行う「井上ワイナリー株式会社」。社員はもちろん、地域も巻き込みながら、SDGsの取り組みを実践している。
今回は、「TOSAワイン」の製造や販売に携わる、製造部長の河原卓也(かわはら たくや)さんに、資源循環の取り組みや地域との連携についてお話を伺った。
捨てていたものから生まれる新しい価値

井上ワイナリーは、「無比なる価値の創出を以って世の技術発展に貢献し、お客様・社会と共に、豊かで安心な未来を築いていく」という井上石灰工業グループの理念のもと、事業をスタート。令和3年には自社醸造所が完成し、本格的なワイン製造が始まる一方で、製造工程で発生する「大量のブドウの搾りカス」という新たな課題にも直面する。

「ブドウの一部を捨てるのはもったいない」と、活用方法を模索。海外の事例も参考に辿り着いたのが、絞りカスの「堆肥化」だった。自然の恵みから生まれた副産物を再び土へ還す、循環型の醸造を目指す取り組みが始まった。
廃棄ゼロを達成し、社員の意識も大きく高まる
令和7年には「ぶどう搾り粕堆肥場」を新設し、搾りカスを堆肥化する体制を整備。完成した堆肥は、自社ブドウ畑に還元されるという。

さらに、ワイン製造時に発生する沈殿物である「澱(おり)」を活用した染色エプロンや、搾りカスを使った生活用品の開発も進める。その結果、かつて最大3トンに及んだ搾りカスは、令和7年にはゼロを達成。廃棄物削減という具体的な成果は、社内のSDGs意識を大きく高める契機にもなった。
ブドウ栽培が地域の生きがいづくりに

井上ワイナリーは、地域の農福連携にも積極的に取り組む。県内の「集落活動センター」や社会福祉協議会と連携し、ワイン用のブドウ栽培を委託。令和3年には7アールだった圃場面積は、現在20アールへと拡大。圃場では、多くの高齢者が栽培に携わっている。
「自分たちが育てたブドウがワインになり、それを子や孫に贈る。そんな喜びがやりがいにつながっていると思います」と河原さん。就業機会の創出だけでなく、地域とのつながりや誇りを生み出す取り組みへと発展している。
オール高知で取り組むSDGs

ブドウにとどまらず、「山北みかん」のワインや、「佐川町産リンゴ」のシードルなど、県産果実を活用した商品開発も進める。見た目の理由で流通しづらい果実も買い取り、付加価値を付けて商品化することで、県内農家の新たな販路を創出しているという。
「SDGsに取り組むことで、自分も周囲も、そして未来も豊かになる」と河原さん。資源循環、農福連携、地域との協働。それぞれの取り組みがつながりながら、「オール高知」で持続可能な地域社会をつくっていく展開を生み出している。